2024年のテーマを「洋食と焼鳥」に据えて臨んだ新年一件目は前々から気になっていた門前仲町のトラットリア、「ブカ・マッシモ」さん。長年ビブグルマンに名を連ね、ひとりで行けて予約も取りやすいとなれば行かねばならない。
場所と雰囲気
場所は東西線門前仲町駅の2番出口から徒歩で3分ほど。永代通りの南側、通りと並行に軒を連ねる飲み屋街のはずれにある。入り口はどことなくフィレンツェの街レストランという雰囲気。「路地裏のイタリア食堂」というコンセプトにぴったりである。
中に入るとやや縦長の店内。左右にテーブル席を配し、奥にはカウンターと厨房。キビキビとした動きのサービスの女性と黙々と料理を生み出し続ける厨房のシェフの2人体制だ。
2人掛けのテーブルに席を用意していただき、いざ。と思った矢先に厨房からどうしようもない香りが溢れてきてなんだかわからないけどそれは食べることに決めた。
プロセッコを飲みながらメニュー眺める。初めてのお店は定番を攻めるのが定石。冷菜の小皿料理2品に牛トリッパの煮込み、肉料理は蝦夷鹿の炭火焼き、パスタは先ほどの香りの元凶、白トリュフとチーズのニョッキで決まりである。
「基本的にボリュームはあるのですが」と前置きしながらもポーションの調整は可能とのことでお願いしました。楽しみである。
トリッパ煮込みとニョッキ
グリーンピースと生ハムのマリネ、ほうれん草のフリッタータの小皿料理を平らげるといよいよ温菜。皿の上でぐつぐつと煮える内臓とソースとチーズ、肉と野菜の旨味がぎゅっと詰まっている。調整してもらったのにかなりボリュームがある。これは人と来てワイワイ楽しむ店だ今更ながら。しかし旨い、王道に旨い。
トリッパ煮込みグラタン風
赤ワインはマルケ州のRosso Piceno。これはMatteiという作り手のものですね。チャーミングな果実感と程よい渋み。サンジョベーゼらしい鉄分ぽい風味もあって単体で十分美味しい。トリッパとの相性も抜群で間違いないとはこういうことを言う。ハイパーエクストリームうまい。
マルケ州のRosso Piceno
ところで、隣のテーブルの紳士淑女はあか牛のタリアータ食べている。いや、牛もいいよね、迷ったんだけどね。ジビエは個体差があると聞くし先日食べたロティと比べるのも面白いと思ったんですよ言い訳させてもらうと。
そんなことを考えているうちに、凄まじい芳香を携えてニョッキが登場。
濃厚な味わい、香りがすげぇ
これはね、もうね、一生咀嚼していたいやつ。魅惑的なトリュフの香りにチーズの戦闘能力が恐ろしく高い。ニョッキに絡みついて噛むたびに味蕾を刺激してくるし、そこにきてトリュフの香りが鼻を突き上げてくる。ニョッキいいよな、ニョッキ。パッパルデッレとともに大好きなパスタ。うますぎ。
蝦夷鹿と食後酒
そしてメイン、蝦夷鹿の炭火焼き。炭火独特の香ばしさとなんとも形容のし難い肉の香り。どんぐりとかたくさん食べるとこんな香りになるんすかね?そしてやっぱりでかいのよね。嬉しすぎますね。
とても柔らかい
食べてみると先日の筋肉質で野生味溢れる蝦夷鹿とは違い、さっくり柔らかでほんのりスパイスの風味がある。繊維が細く、暴力的な旨さというよりは繊細な、それでいてずっと咀嚼していたい心地の良い旨さがある。
とても大きい
ものすごく満足させてもらってこんなこと言うのも申し訳ないのですが、昔から基本的にデザートあまり食べないんですよね。イタリアンやフレンチでは食後にドルチェやデセールを食べるのが一般的らしく勧められるのですが、食べない代わりに食後酒や甘いお酒をいただくことにしています。
甘口ワインやリキュールなどがあればお願いします、とオーダーしたところ、サービスでお忙しいにも関わらず説明付きでたくさん出していただきました。まずはトスカーナの甘口ワインのヴィン・サント。
トスカーナの甘口ワイン、Vin Santo
これが無茶苦茶良いワインだった。赤ワイン用葡萄が混ぜられているからか力強い骨格があって、香りにもボリュームがある。最初はレーズン、ナッツのような濃厚な甘さを連想させる香りがあり、時間が経つにつれて紅茶や枯れた花のような植物のニュアンスが出てくる。リカーゾリ家、貴族なだけあって良い酒作るぜ。
姑のミルク
あと、この怪しい髑髏のお酒も気になったので飲んでみた。ラッテ・ディ・スオチェーラというのは「姑のミルク」という意味らしい不気味すぎだろ。飲んでみると超つえー、よくみたらアルコール度数が70%と書いてある…。オリエンタルな香水、オーク樽、ドライフルーツなど気味の悪い名前に反して非常にポジティブな香りが感じられる。ものすごく高価な「ねり消し」があったらたぶんこんな感じの香りがすると思う。加水すると香りの要素が立体的に出てきて面白かった。
食材と立ち飲みバールみたいなお店もご近所にオープンしたそうで、この日食べ逃した生ハムなどを手に入れに近いうちに伺いたい。また好きなお店できてしまったな…。ご馳走様でした。
飲んだお酒↓
|
コメント