今年に入って「老舗酒場」を集中的に訪問していた時期がある。このお店とはその時に出会ったのだけれど、とにかく魚が美味しくて感動してしまい、その後ほとんど間を置かずに2回ほど伺った。秋に入り旬の魚貝も変わってきたタイミングで再訪した次第である。
刺身はおまかせ
以前訪問したときに「嫌いなものがなければ「おまかせ」で注文してもらえたら良いものを出しますよ」とのアドバイスをいただいた。今日はそうさせていただきます。他のお客さんがいる手前「おすすめ」は言いづらいんだそうだ。老舗らしい配慮だなぁ。
日本酒を啜りながらかまぼこをカジカジしているとお造りの到着。派手さとかは一切ないんだけど切り身には脂からの光沢があって美しい。見たらわかるうまいやつ。
この日の「おまかせ」刺身
まずはひらめ。身にはシコシコとした弾力があり噛むほどに味わい深い。余計な水分はなく脂が表面に浮いているので舌触りもしっとり滑らか。パーフェクト白身魚オブザイヤーノミネートですこんなもんは。いやほんとにうまい。この酒場は驚きに溢れている。
ひらめとえんがわ
続いて真鯛。こちらは皮霜造りかな。身にざらつきはなく滑らかで程よい食感がある。ひらめよりも甘みが強く感じられた。うーん、こっちもうますぎる……年間最優秀ホワイトフィッシュをめぐる闘いが直径25センチの皿上で始まった。
真鯛
きんきの煮付け
お造りには一つだけ「小肌酢を入れてほしい」とリクエストしていた。注文が入ってから酢締めするこの小肌酢、酢の入り具合は浅く生身の感触や脂を存分に楽しめる仕様。木の葉造りの見た目も美しい。早く注文しないと無くなっちゃうんですわ。
小肌酢〆
日本酒をやりながら煮魚を検討。この日はきんきと黒むつとのことで迷った末にきんきを選択。
それにしても今日は魚が豊富だなあとカウンターの冷蔵ショーケースを眺めながら思う。かなり大ぶりのひらめ、真鯛、しまあじ、焼き魚用の太刀魚とかます、きんき、黒むつなどなど……魚の顔を眺めて酒をすする真顔のおっさん。
しばらくしてきんきの煮付けとご対面である。赤く美しい姿煮、添えられた豆腐と肝がうれしい。
きんきの煮付け。煮魚オブザイヤー2023。
尾鰭の方から一口食べると……脂が甘い…。味は柔らかくほろっと崩れ旨味が口いっぱいに広がる。肝も一口…ははは…これは上質の白レバーだ。煮汁が染み込んでめちゃくちゃうまい今思い出してもよだれ出てくる。
ぬる燗をツルツル飲みながら魚の脂を流しまた出汁の旨味にやられて日本酒を飲む…こんなもんどっちもすぐ無くなりますわ最高か。
冬はおでん
最後にこのお店のもう一つの名物らしいおでんについて聞いてみたところ、11月からを予定しているとのこと。自分は通い始めて日が浅いので未経験だけどこちらも無茶苦茶美味しいらしい。今から冬の再訪が楽しみである。
最高の魚をシンプルなやり方で食べるのにここ以上はないと思う。一生通いたいお店である。ごちそうさまでした。
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